突撃★インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」

各大学のキャリアセンターの方が考える「仕事で活躍するために必要な力」についてのインタビューを紹介いたします。

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_4湘南工科大学

「忍耐力・自分が合わせる力・好奇心」―湘南工科大学 大学事務局 就職課 課長補佐:中川知加子氏


 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。

 今回は、湘南工科大学 大学事務局 就職課の課長補佐:中川知加子氏にお話を伺いました。


――新卒の新入社員が就職して3年以内に辞めてしまう離職率が問題視されていますが、新入社員側にはどのような原因・問題が考えられるでしょうか?

 やはり我慢が足りないというところですね。今まで与えられてきた環境で失敗経験もなく育ってきたために、何か努力して…とか、何か我慢して…という状況が、家庭においても学校においてもなかったと思います。黙っていれば、周りが何でもやってくれ、次はこれをやりなさい、はい次はこれをやりなさいという感じで道筋を示してもらってきたけれども、やはり社会人になるとそうはいかない。自分で考えてやらなくてはいけないし、ときには怒鳴られることもあります。怒られたことがないということも理由の1つになるかと思います。


――我慢や忍耐力をどうやって身につけさせたらいいでしょうか?

 それをどうするか…というところですが、今、本校で行っていることで言いますと、今年の4月から授業の出欠を厳しくしました。遅刻・出席の確認を厳しくして、3分の1以上欠席した者はその科目の成績評価を受ける事ができないという元々学則で定められていた決まりを厳しく守ることにしました。
 それから、授業すべてをアクティブラーニングにしていこうということで、教員・職員向けに集中的に研修をしているところです。
 今の1年生は、いわゆる教育改革の第1号ということになります。1年生の始めの授業ガイダンスからアクティブラーニング方式で実施したところ、学生同士のコミュニケーションが活発化し、友だちがすぐにできやすくなり、1年生はいい感じでスタートすることができたという話を聞いています。ただ、それが我慢や忍耐力につながるかというと、それは副産物程度かもしれませんが、少なくとも一方的に授業を聞いて、遅刻しても何も言われないというような授業は止めたので、積極的に授業に関わってくれる学生が増えるのではないかと期待しているところです。
 今年の4月から変えたので、3ヶ月の間での学生の変化としては、小さいものではありますが、朝9時の授業開始の少し前の時間になると、遅刻したくないがためにと、タクシーで乗り付けてくる学生もいます。それから、以前は一日中、学生が学内のどこかしらにいたのですが、今は、授業中は学生がきちんと授業に出ているので、教室以外の場所にほとんど学生がいなくなったということがあります。また、学生の顔つきが変わってきた印象もあります。
 3ヶ月で既に変化が出ているので、2年3年経ったら、もう少し結果が出るのではないかと思っています。


――我慢・忍耐力以外に、離職率の原因として考えられるものはありますか?

 よくミスマッチと言われますが、職種どうのこうのよりも、自分が合わせられる人間にならないと、どこに行ってもダメだと思います。「この会社はミスマッチだ」と言っている学生は、例えば、クリエイティブな仕事しかしたくないと思っていて、そういう仕事ができると思って入社するけども、始めは下仕事がほとんどで、それが務まらない人は自分がやりたいクリエイティブな仕事など与えられる訳がありません。
 やはり3~5年は、言われる仕事をこなして実績を積んでから、自分のやりたいことをやらせてもらえるようになるように精進することが必要だと思います。3~5年後などの目標の自分は思い描けているけども、1年2年で何をやっているのか、目標までの道筋が思い描けていないのが原因だと思います。
 今まで、何事も受け身でやってきた学生にとっては、何だかよくわからないけども、とりあえず会社に入ってしまえば、やりたいことができるんだろうと思っているのではないでしょうか。そこで、我慢して乗り越えることができるかどうかがポイントだと思います。乗り越えることができた人は、自分のやりたい仕事をできるようになれるということです。


――我慢・忍耐力や、自分が合わせることが必要ということを伺いましたが、仕事で活躍するために必要な力としては、他に何があるでしょうか?

 やはり好奇心が旺盛であることと、可愛がられることが必要だと思います。要は、教えられ上手になることが大切だと思います。「この人だったら、教えてあげたい」と思ってもらわないと、先輩も人間なので、きちんと教えてもらえないでしょう。細かいことでもわからないことは聞きに行ったり、教えてもらったらちゃんとお礼を言ったり、結果を報告したりということができないと、「じゃあ勝手にやれば」と言われてしまいます。せっかく教えたのに、全然無反応だったり、勝手に違うことをやっていたり、そのことで失敗してしまったりということがあると、教えてあげようという気持ちにならないと思います。
 要するに寄ってきてくれないと何もしようがないと思います。こういったことも含めて、コミュニケーション力が大事ということになるのだと思います。


――好奇心旺盛であることは、なぜ必要なのでしょうか?

 例えば、1つ教えたとして、1つで満足してしまったら、それで終わってしまいます。それが好奇心旺盛であれば、Aがわかったら、こういう切り口もあるのではないですか?この上はどういうことですか?これの横はどういうことですか?というように発展して考えることができるので、「じゃあ、そんなに興味があるなら、次これやってごらん」というように仕事を任せてもらえるようにもなるかと思います。好奇心旺盛であることは、自発的にやりたいという気持ちでもあるはずなので、自分がやる気になったものは、誰かに「やれ」と言われたものよりも、効率も飲み込みも速いと思います。
 一方的に自発的になれと言われても、何を自ら進んでやったらいいのかわからないと思います。やっぱり基になっているのは、好奇心ややる気、どんなところにも興味を見いだすことだと思います。どんなつまらないと思える仕事の中にも、何かしら興味を見いだして、モチベーションを上げていく工夫が必要なのではないでしょうか。


――御校では、自発的になるための取り組みはされていますか?

 1つは、工学系の特徴ともいえる実験・実習です。自分から手を動かさないと、何もできませんから。実験・実習の授業方法も変わりつつあり、決まった作業をしてレポートを書くという昔ながらのスタイルではなく、いわゆるPBL型の進め方を取り入れたものが増えています。また,学外での様々な社会活動を通じて、身に付けた知識や技能が役立つことを実感できる科目もあります。これらは、自発性を高めるために効果的だと考えています。
 また、本学のカリキュラムは自由度が高く、共通の教養科目や、総合工学科目という本学独自の科学技術に関する教養科目を多く選択することも可能です。これらの授業では、専門科目よりもアクティブラーニングを積極的に取り入れ、社会人としての基礎となる汎用的な能力を伸ばそうとしています。学生が自分に必要な授業を考え,主体的に学ぶ意識を持ってもらうことが目的でしたが、一方で単位の取りやすさ優先、つまみぐいのようになってしまうこともありました。
 そこで、今年からシラバスで、各授業で学ぶと得られる力を明記しました。これらの取り組みが上手くいけば、こういう力を付けたいというポイントを自分で積み上げてカリキュラムを作ることができるのではないかと思っております。
 すべての授業が出席・遅刻が厳しくなったことで、単位が取りやすい授業だからとるというような取り方がなくなり、選ぶ基準が自分のやりたいことや目指した力を伸ばしたいという風になるのではないかと考えています。


――キャリアセンターとして、今後の課題・展望をお聞かせください。

 永遠の課題ですが、動かない学生をどう動かすかですね。
 今後の展望としては、今年から始めたアクティブラーニングの結果が出て、ただ内定を取らせるのではなく、学生皆が満足する就職先を提供できるようにと考えております。本人が喜び、親も喜び、学校も喜ぶという質の高い就職をさせるというのが目標です。



(この記事は、2014年7月某日に、湘南工科大学 大学事務局就職課内でインタビューした内容をもとに構成されています。)