突撃★インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」

各大学のキャリアセンターの方が考える「仕事で活躍するために必要な力」についてのインタビューを紹介いたします。

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_1学習院大学

「自ら考え行動する力」――学習院大学キャリアセンター 部長:瀬谷晴仁氏


 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。
 今回は、学習院大学キャリアセンターの部長:瀬谷晴仁氏にお話を伺いました。


――早速ですが、ズバリ仕事で活躍するために、最も重要な力は、なんだと考えていらっしゃいますか?

 いろいろ大事なものはありますが、いちばんと言われると、「自ら考え行動する力」ですね。キャリアセンターのセミナーもたくさんありますが、基本的にはこの力を身につけるというところが軸となっています。


――なぜ、「自ら考え行動する力」が仕事で活躍するために必要なのでしょうか?

 言われたことはやるけども、それ以上のことはしない社員のことを、「指示待ち社員」と言いますが、そういった人は、次にどうすべきかを自分なりに考えて行動することができないため、上司や先輩に指示されないと動けないわけです。当然のことですが、いつも上司や先輩が指示してくれるわけではなく、マニュアルにないような想定外の事態は日常的に起こり得るわけで、「指示待ち社員」では通用しないことは言うまでもありません。そのような社会人にならないためには、早くから自分で考え、行動する習慣を身につけておく必要があります。
 少し話がそれてしまうかもしれませんが、最近の学生をみていると、自分の考えを自分なりにまとめ、それを相手に伝えるということが苦手なようです。キャリアセンター主催のセミナーでそのようなことを求めると、最初は戸惑ってしまう学生が多いのです。なぜなのかを考えてみると、小さい頃から育ってきた環境の中で、他人と違う意見を言うことに抵抗を感じたり、失敗を極端に恐れたりする傾向があるように思います。
 こうした状況だからこそ、自分なりの考え方、自分なりの意見を、相手にきちんと伝えられる人材を育てることが必要だと考えています。


――「自ら考え行動する力」を身につけるため、キャリアセンターとして、具体的にどういった取り組みをしているのでしょうか?

 キャリアセンターでは、一昨年から、一方的な講義形式ではなく、グループワークを取り入れた討論型のセミナーを実施しています。毎回テーマは異なりますが、例えば「皆さんが考える営業職のイメージとは?」のようなテーマについて、まずは自分の考えをまとめます。その後、たまたま隣に座った者同士がチームとなり、お互いの考えを発表し意見交換します。最後にチームとしての意見をまとめ、発表させることもあります。
 他の人と互いに発表し合うことで、「そういう価値観もあるのだな」ということを体感してもらい、視野を広げられるようにしています。その結果、自分で考える力に加えプレゼンテーション力が徐々に身についていきます。
 考える力やプレゼンテーション力は、場数を踏んでこそ身につくものですので、毎回反復してグループワークを行っています。これは、就活を突破するためというよりも、その先、社会人になってから活かせる力、一生モノの力を身につけてもらうことを前提にしています。


――そういった討論型のセミナーでは、自分からなかなか考えを発言することができない学生もいるかと思いますが、そういった学生に対して働きかけはしていますか?

 前にも述べたとおり、毎回のセミナーにおいて議論し発表することを、繰り返し体験することにより、始めた頃に比べると、多くの学生が積極的に自分の意見を発表できるようになります。また、自分よりも企業や職種のことをよく知っている人、人前で上手に話すことができる人など、いろんな学生と接することで刺激を受けることができるという効果もあると思います。
 何百人もの学生が参加するので、すべての学生に同じ効果があらわれないこともあるかと思いますが、そのような場合は「個人面談」で、個々のペースに合わせてサポートしていくことになります。


――こういったセミナーなどは、1・2年生も対象としているのでしょうか?

 これらのセミナーは、主に3年生および大学院博士前期課程1年生を対象としていますが、1・2年生が受講可能なセミナーもあります。
 1年生向けには、まず新入生ガイダンスを開催し、部活・サークル、ゼミ、アルバイトなど何か打ち込めるものを見つけましょう、そして4年間充実した学生生活を送るよう心がけましょうといった内容のお話しをします。
 その後も、業界研究ワークショップ、職種研究ワークショップ、公務員ガイダンス、マナー講座、マスコミ・広告セミナーなど、1・2年生も参加できるものを用意していますが、参加者は決して多いとはいえない状況です。キャリアセンターとしては、より多くの1・2年生に参加してもらうことが課題となっています。


――学生が集まらないという課題があるということですが、逆に学生に人気のあるセミナーはありますか?

 学習院大学の看板行事である面接対策セミナーは、非常に人気があります。昨年度は3年生の在籍者約2,000人のうち1,500人以上の参加希望者がありました。このセミナーは、あまり宣伝をしなくても先輩からの口コミで参加者が多く集まります。
 面接対策セミナーは、総勢290名のOB・OG講師が、面接のテクニックだけでなく「働くことの意義」について熱く語り、たった2日間ではありますが、受講した学生の大きく成長した姿を見ることができます。
 ただし、面接対策セミナーの参加希望者が増えたこと自体は喜ばしいことなのですが、「このセミナーだけ受ければ何とかしてくれるだろう。」という受身の姿勢で参加する学生が、ごく一部ではありますが存在します。どのセミナーでも同じですが、何を得るためにセミナーに参加するのかという目的意識をしっかり持ち、自分なりに準備して参加することにより、より多くのものを得ることができます。そういった意味でも「自分で考えて行動する力」が求められるわけです。


――キャリアセンターとして、今後の課題・展望をお聞かせください。

 景気の回復に加え、面接対策セミナーや討論型のセミナーの効果もあってか、就職率はここ2年間上昇しました。しかし、キャリアセンターとしては、就職率だけでなく、自分がやりたい仕事、入りたい企業にどれだけ就くことができたかがより重要です。そのような就職の「質」を少しでも上げていければと考えています。
 その実現のためにも、学生に「自ら考え行動する力」をつけさせる努力を今後もつづけていきたいと思います。


(この記事は、2014年5月某日に、学習院大学キャリアセンター内でインタビューした内容をもとに構成されています。)