突撃★インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」

各大学のキャリアセンターの方が考える「仕事で活躍するために必要な力」についてのインタビューを紹介いたします。

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_5川村学園女子大学

「忍耐力・コミュニケーション力」―川村学園女子大学 就職支援室 室長:塚本一史氏、学生生活支援室 室長:津野 宏之氏

 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。

 今回は、川村学園女子大学 就職支援室 室長:塚本一史氏、学生生活支援室 室長:津野 宏之氏にお話を伺いました。


――新卒の新入社員が就職して3年以内に辞めてしまう離職率が問題視されていますが、新入社員側にはどのような原因・問題が考えられるでしょうか?

塚本氏:
 私が思うには、最近の企業の風潮として、キャリア組などの即戦力を求めているように感じます。特にホテル業界では、新人ではなく、経験者を採用しようという動きも強く感じますので、前向きの離職のケースもあるかと思います。
 悪いケースで言えば、そんなに苦労しないで育ってしまっているというのがあると思います。


――御校の学生でも、そのような学生は多いですか?

塚本氏:
 壁にぶつかってしまい、くじけてしまう学生は多かれ少なかれいるように感じます。ただ、本学は小さい規模の大学のため、1対1で語れるチャンスがあるので、モチベーションを上げられるように、凹んでいる学生にも手が届くという意味では、メリットはあると思っています。

津野氏:
 学生側が、嫌だったら簡単に職を変えられるというような感覚で考えている場合がありますね。前向きに離職するというだけではなく、最初に描いていた理想と会社の実態が違うみたいだと感じたころから、だんだん仕事に対しての意欲も失われてきて、やがて辞めてしまう。その後、正社員として転職するというよりも、気楽にアルバイトしながら場つなぎでやっていくという対応を考えている例は少なくありません。

塚本氏:
 実際、今の4年生が内々定をとってくると、意気揚々としていい顔をしていますが、持っていたイメージと現実との違いを、ギャップとして捉えすぎているという部分もあるかと思います。学生が企業に就職してから、「当然ギャップもあるだろう」という感覚を持てるのか持てないのかというところがあるかと思います。


――そういったギャップが起きてしまうのは、何が原因だと思いますでしょうか?

塚本氏:
 様々な要因があると思いますが、学生のうちに、多くの挫折を経験した者の方が当然、打たれ強いです。実際に社会に出たら、打たれ強さや上手く立ち回って社会を生き抜くための技が必要だと思います。そういった意味でいろいろな経験ができるチャンスをいかに与えられるかが大事だと思います。大学だけの話ではありませんが、大学4年間の中でも個人差はあると思います。

津野氏:
 ひどい言い方かもしれませんが、「努力すれば夢は叶うんだよ」ということを言われ続けて育ってきたという部分も、もしかしたら影響あるかもしれないですね。本当に努力が報われて成功した事例があって、それを小さいときから提示されているかもしれませんが、現実にはなかなか自分の進む道には、自分の思う通りにはいかないことがいっぱいありますよね。そこで、どうアジャストできるか、そういう力があるかないかだと思います。
 描いていた理想と、会社の実態が違うと気付いたときに、自分自身もその会社組織の一員であるから、自分の理想に近づけるように努力して仕事を続けるのか、それとも第三者的な発想で、自分の理想とは合っていないと思って退くのか、という違いだと思います。一般的に、後者の事例を耳にすることが多く、今の若い者は我慢強さがないとか、簡単に諦めてしまう、というように結論付けされてしまうのだと思います。前者のように対応できる人は、あまり多くはないかと思います。理想としては、そういう学生を育てたいですね。大事なのは、柔軟に対応する力や柔軟に変化できる力ですね。
 運動会でも、順位を付けない運動会を実施するところもありますが、競争することをさせないということですが、社会ではそうではないことがいっぱいあります。

塚本氏:
 実際、就活が始まって、急に競争とか、人を押し退けてでも勝たないといけないという教育をしても無理だと思います。今までそういう状況にない現場で育ってきているので。


――今までの教育と変わることで、戸惑う学生も多いですか?

塚本氏:
 そうですね…結局、戸惑っているのだと思います。大学1年、2年と階段を上ったけども、いざ就活で何をすればいいかわからない。自分は何がしたいのか?というところからだと思います。
 私は、今年6月まで入学支援室にいたので、高校生と接することが多かったのですが、「私はお菓子やケーキが好きなので、将来食品関係で働きたいんです」という高校生と出会いました。「そうなんだ。じゃあ、そこで何をやりたいの?」と聞いたら、「あー…」と言って黙ってしまいました。そこで、「できた商品を多くのお店に置いてもらう営業もいれば、商品開発など研究職の仕事かもしれないし、福利厚生を含めた給与計算などの事務の仕事かもしれません。組織って結局、いくつも分業してひとつになっているんだよ」ということを説明したら、「あっ、そうなんですね」と、その高校生はそこで改めて気づくということがありました。自分が持っているスキルに視点を置けば、お菓子の会社以外にも視野を広げることができると思います。
 そういったところの教育は、大学教育は充実してきていると思います。一般教養と専門科目だけがカリキュラムにあればいいというのが昔の大学でしたが、今は、キャリア教育自体がカリキュラムの中にありますから、昔よりも手厚く取り組んでいると思います。ただ、50人、100人、200人集めて座学をやるだけではダメだと思います。ピンポイントでその人に合わせたアドバイスが必要だと思います。


――その人に合わせた教育というのは、御校ではどういった形で取り組まれているのでしょうか?

塚本氏:
 9月に実施する3年生を対象とした個人面談があります。学生に履歴書に準ずる進路調査書を作成してもらい、我々就職支援室のスタッフが1対1で面談をするという流れでやっています。そこで個々の学生に合ったアドバイスをしています。3年次に、そういった面談をすることで、学生が進路をどう考えているかを適宜追跡できるようなシステムにしています。その学生に合った何かがあるのではないかと、一緒に探るというように、きめ細かくやっています。
 ただ、ジレンマというか、いろいろと問題もあります。うまく波長が合った学生は、何回も足を運んでくれるのですが、本当はもっと来てほしいと思う学生がなかなか来てくれない。1対1が有効だと思っていても、そのような環境や場をいかにして作れるか、だと思います。もっと接触したい学生を、どのようにこの就職支援室に足を運ばせるかが課題です。有料講座とか、自分で一歩踏み出さないと受けることができない講座などへいかに足を運ばせるかも課題です。


――本当に来てほしい学生は、どんな学生なのでしょうか?

塚本氏:
 私は、活動が止まっている学生だと思っています。

津野氏:
 やらなきゃいけないことはわかっている。でも一歩が踏み出せない。こちらからも、本当はそういう学生に来てほしいと思っていても、そういう学生の方が、我々の就職支援の部屋を利用する機会が少ないです。
 各学科に担当教員とは別に、「教務補助」という各クラスの事務職がいるのですが、そちらでも悩みを聞いてもらったり、背中を押してもらうようにしてもらったり、とにかくなるべく来てほしい学生に足を運んでもらうように工夫しています。


――やらなきゃいけないとわかっているけども、なかなか動けないのは、何が原因なのでしょうか?

津野氏:
 ダメ出しが怖いというのを聞きます。動くことで、悩むことや困ることがあると思います。当然、就職活動もそうですが、1社2社受けていい結果が出ればいいですが、それでうまくいかなかったりしたら、そこで就職活動を辞めてしまう学生もいます。
 先ほどの話につながりますが、今まで育ってきた中で、ダメと言われることを自分で受け入れる経験をしていない。我々は「ダメもとでもいいから挑戦しろ」と言うけども、本人たちは「ダメもとがヤダ」と思っています。その意識を変えないと就職に結びつかないと思います。
 就職支援課室から働きかけたり、学科の教員から働きかけたり、外部の講師の方から働きかけたりして支援していると、何かきっかけを掴んで学生の様子がガラッと変わることがあります。その変化が、いい結果に結びつく前兆と思っています。


――そのガラッと変わる瞬間は、何がきっかけなのでしょうか?

津野氏:
 なんでしょうね。その人、その人によって、切り替わるタイミングやきっかけは違うと思うのですが、変わると顔つきや仕草が大きく変わってきます。

塚本氏:
 きっかけというのはいろいろあると思います。オープンキャンパスで、各学科で応援学生を出すのですが、これまでサークルにも入らず、大学に来て授業受けて帰るという日常を過ごしていたというような学生がいました。その学生が、オープンキャンパスの手伝いをやったことで考え方に変化が表れ、「大人(大学の職員など)が自分の存在をわかってくれた。頼りにしてくれている。」と感じたそうです。それから就職支援室へ来るようになったという学生も何人かいます。
 オープンキャンパスや学友会、SA(Student Adviser)というのもあります。
 SAは、好きなことややりたいことがあれば、どんどん企画してイベントを単発にやっていこうという学生主体のサークルのようなものです。例えば、着付け教室。浴衣を自分で着てみんなで花火をしようというものや、バーベキュー大会などさまざまなものがあります。

津野氏:
 学生はいろんなものを探してきますよ。味の素とコラボして、料理教室をやったりしました。食材や調味料を提供してもらうなど、企業様にしても商品の宣伝にもなるでしょうし、学生にしても、大学周辺に住んでいる1人暮らしの学生も多いので、自炊の勉強になるというお互いにwin-winの関係になっています。4年生が、就職が決まってからSAに参加して、就活のノウハウを後輩に伝えたいという意図で就職応援セミナーというものを企画して実施していたりもしました。


――ここまで、柔軟性や忍耐力、自分で動ける力など出てきましたが、仕事で活躍するためには、どういった力が必要でしょうか?

塚本氏:
 ありふれた言葉ですが、コミュニケーション力が大事だと思います。また、いくつかの挫折を経験することも非常に大事かと思います。相手の立場になって考えたり、人の話を聞いたりできる者は、如何なる時もうまく対処できる力を備えているのではないかと思います。


――先ほども、打たれ強くなるために、挫折を経験できるチャンスや場が必要とのことでしたが、どういった形で失敗を提供されているのでしょうか?

塚本氏:
 就職活動中の学生に声掛けをするのですが、そこで落ちてしまった学生への声のかけ方なのですが、私は「そうか…じゃあ、誰よりも速く5社10社落ちてみようよ。のちのち、TVニュースで10社20社…50社落ちていますという不思議と元気のいい学生がいっぱい出てくると思うよ。」というような失敗することを怖がらせない声掛けはしています。
 あとは、就職課支援室の管轄ではないのですが、リーダー研修というものもやっています。

津野氏:
 学生の活動を活性化させたいと思って、今年3月から取り入れています。9月にも実施するのですが、リーダーでなくても、興味のある人はどんどん参加しなさいと言って呼びかけをしています。
 そこでは、コミュニケーション力を養成するグループワークをさせたり、社会人基礎力につながるような講座を設けたりしています。一番の狙いは、そこに参加した学生相互のコミュニケーションの活性化です。部活なら部活、サークルならサークルの範囲内では仲良くコミュニケーションがとれるけども、他の組織間を横断するようなコミュニケーションはなかなかとれないですよね。お互いに情報を共有しながら会話ができるようになり、新たなコミュニティーを構築して、いろいろなイベント企画をやってくれたらいいと思っています。

塚本氏:
 あとは、失敗の経験ができる場所としては、オープンキャンパスだと思います。在学生の懇談コーナーで高校生と経験談を話す以外に、受付をしたり、案内をしたり、様々なことを担当してもらいます。社会人基礎力にある3つの力、アクション、シンキング、チームワークを学べる場だと思います。「高校生のためのオープンキャンパス」ということだけでなく、学生にも自分の成長の場としてこの場を利用してほしいということを、始まる前に伝えています。それがある意味、失敗を提供できる場かなと思っています。


――就職支援室として、今後の課題・展望をお聞かせください。

塚本氏:
 本学は、去年の就職決定率が98.1%だったのですが、やはり我々現場としては、就職希望者の98%ではなく、就職希望率自体を底上げしたいと思っています。女子は、昔は就職しなくてもいいというような時代がありましたが、今はそういう時代ではありません。けれども、男子と比べるとやはり就職希望率は低いと思います。本学の就職希望率は76.2%というところなので、これを80%くらいには上げていきたいというのが今後の課題です。



(この記事は、2014年7月某日に、川村学園女子大学 就職支援室内でインタビューした内容をもとに構成されています。)

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_4湘南工科大学

「忍耐力・自分が合わせる力・好奇心」―湘南工科大学 大学事務局 就職課 課長補佐:中川知加子氏


 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。

 今回は、湘南工科大学 大学事務局 就職課の課長補佐:中川知加子氏にお話を伺いました。


――新卒の新入社員が就職して3年以内に辞めてしまう離職率が問題視されていますが、新入社員側にはどのような原因・問題が考えられるでしょうか?

 やはり我慢が足りないというところですね。今まで与えられてきた環境で失敗経験もなく育ってきたために、何か努力して…とか、何か我慢して…という状況が、家庭においても学校においてもなかったと思います。黙っていれば、周りが何でもやってくれ、次はこれをやりなさい、はい次はこれをやりなさいという感じで道筋を示してもらってきたけれども、やはり社会人になるとそうはいかない。自分で考えてやらなくてはいけないし、ときには怒鳴られることもあります。怒られたことがないということも理由の1つになるかと思います。


――我慢や忍耐力をどうやって身につけさせたらいいでしょうか?

 それをどうするか…というところですが、今、本校で行っていることで言いますと、今年の4月から授業の出欠を厳しくしました。遅刻・出席の確認を厳しくして、3分の1以上欠席した者はその科目の成績評価を受ける事ができないという元々学則で定められていた決まりを厳しく守ることにしました。
 それから、授業すべてをアクティブラーニングにしていこうということで、教員・職員向けに集中的に研修をしているところです。
 今の1年生は、いわゆる教育改革の第1号ということになります。1年生の始めの授業ガイダンスからアクティブラーニング方式で実施したところ、学生同士のコミュニケーションが活発化し、友だちがすぐにできやすくなり、1年生はいい感じでスタートすることができたという話を聞いています。ただ、それが我慢や忍耐力につながるかというと、それは副産物程度かもしれませんが、少なくとも一方的に授業を聞いて、遅刻しても何も言われないというような授業は止めたので、積極的に授業に関わってくれる学生が増えるのではないかと期待しているところです。
 今年の4月から変えたので、3ヶ月の間での学生の変化としては、小さいものではありますが、朝9時の授業開始の少し前の時間になると、遅刻したくないがためにと、タクシーで乗り付けてくる学生もいます。それから、以前は一日中、学生が学内のどこかしらにいたのですが、今は、授業中は学生がきちんと授業に出ているので、教室以外の場所にほとんど学生がいなくなったということがあります。また、学生の顔つきが変わってきた印象もあります。
 3ヶ月で既に変化が出ているので、2年3年経ったら、もう少し結果が出るのではないかと思っています。


――我慢・忍耐力以外に、離職率の原因として考えられるものはありますか?

 よくミスマッチと言われますが、職種どうのこうのよりも、自分が合わせられる人間にならないと、どこに行ってもダメだと思います。「この会社はミスマッチだ」と言っている学生は、例えば、クリエイティブな仕事しかしたくないと思っていて、そういう仕事ができると思って入社するけども、始めは下仕事がほとんどで、それが務まらない人は自分がやりたいクリエイティブな仕事など与えられる訳がありません。
 やはり3~5年は、言われる仕事をこなして実績を積んでから、自分のやりたいことをやらせてもらえるようになるように精進することが必要だと思います。3~5年後などの目標の自分は思い描けているけども、1年2年で何をやっているのか、目標までの道筋が思い描けていないのが原因だと思います。
 今まで、何事も受け身でやってきた学生にとっては、何だかよくわからないけども、とりあえず会社に入ってしまえば、やりたいことができるんだろうと思っているのではないでしょうか。そこで、我慢して乗り越えることができるかどうかがポイントだと思います。乗り越えることができた人は、自分のやりたい仕事をできるようになれるということです。


――我慢・忍耐力や、自分が合わせることが必要ということを伺いましたが、仕事で活躍するために必要な力としては、他に何があるでしょうか?

 やはり好奇心が旺盛であることと、可愛がられることが必要だと思います。要は、教えられ上手になることが大切だと思います。「この人だったら、教えてあげたい」と思ってもらわないと、先輩も人間なので、きちんと教えてもらえないでしょう。細かいことでもわからないことは聞きに行ったり、教えてもらったらちゃんとお礼を言ったり、結果を報告したりということができないと、「じゃあ勝手にやれば」と言われてしまいます。せっかく教えたのに、全然無反応だったり、勝手に違うことをやっていたり、そのことで失敗してしまったりということがあると、教えてあげようという気持ちにならないと思います。
 要するに寄ってきてくれないと何もしようがないと思います。こういったことも含めて、コミュニケーション力が大事ということになるのだと思います。


――好奇心旺盛であることは、なぜ必要なのでしょうか?

 例えば、1つ教えたとして、1つで満足してしまったら、それで終わってしまいます。それが好奇心旺盛であれば、Aがわかったら、こういう切り口もあるのではないですか?この上はどういうことですか?これの横はどういうことですか?というように発展して考えることができるので、「じゃあ、そんなに興味があるなら、次これやってごらん」というように仕事を任せてもらえるようにもなるかと思います。好奇心旺盛であることは、自発的にやりたいという気持ちでもあるはずなので、自分がやる気になったものは、誰かに「やれ」と言われたものよりも、効率も飲み込みも速いと思います。
 一方的に自発的になれと言われても、何を自ら進んでやったらいいのかわからないと思います。やっぱり基になっているのは、好奇心ややる気、どんなところにも興味を見いだすことだと思います。どんなつまらないと思える仕事の中にも、何かしら興味を見いだして、モチベーションを上げていく工夫が必要なのではないでしょうか。


――御校では、自発的になるための取り組みはされていますか?

 1つは、工学系の特徴ともいえる実験・実習です。自分から手を動かさないと、何もできませんから。実験・実習の授業方法も変わりつつあり、決まった作業をしてレポートを書くという昔ながらのスタイルではなく、いわゆるPBL型の進め方を取り入れたものが増えています。また,学外での様々な社会活動を通じて、身に付けた知識や技能が役立つことを実感できる科目もあります。これらは、自発性を高めるために効果的だと考えています。
 また、本学のカリキュラムは自由度が高く、共通の教養科目や、総合工学科目という本学独自の科学技術に関する教養科目を多く選択することも可能です。これらの授業では、専門科目よりもアクティブラーニングを積極的に取り入れ、社会人としての基礎となる汎用的な能力を伸ばそうとしています。学生が自分に必要な授業を考え,主体的に学ぶ意識を持ってもらうことが目的でしたが、一方で単位の取りやすさ優先、つまみぐいのようになってしまうこともありました。
 そこで、今年からシラバスで、各授業で学ぶと得られる力を明記しました。これらの取り組みが上手くいけば、こういう力を付けたいというポイントを自分で積み上げてカリキュラムを作ることができるのではないかと思っております。
 すべての授業が出席・遅刻が厳しくなったことで、単位が取りやすい授業だからとるというような取り方がなくなり、選ぶ基準が自分のやりたいことや目指した力を伸ばしたいという風になるのではないかと考えています。


――キャリアセンターとして、今後の課題・展望をお聞かせください。

 永遠の課題ですが、動かない学生をどう動かすかですね。
 今後の展望としては、今年から始めたアクティブラーニングの結果が出て、ただ内定を取らせるのではなく、学生皆が満足する就職先を提供できるようにと考えております。本人が喜び、親も喜び、学校も喜ぶという質の高い就職をさせるというのが目標です。



(この記事は、2014年7月某日に、湘南工科大学 大学事務局就職課内でインタビューした内容をもとに構成されています。)

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_3成城大学

「他者と協調しながらも、自らを高め、集団を牽引する力」―成城大学キャリア支援部キャリア支援課 主任:長尾繁樹氏


 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。
 今回は、成城大学キャリア支援部キャリア支援課主任:長尾繁樹氏にお話を伺いました。


――仕事で活躍するために必要な力は、どのようなものだと考えていらっしゃいますか?

 本学は、今まで展開してきたキャリア教育のプログラムを、平成23年度から体系化して、「就業力育成・認定プログラム」という形で展開しています。このプログラムの大きなテーマとして「未来社会に貢献できる就業力を育成する」ということを掲げ、「他者と協調しながらも、自らを高め、集団を牽引する力」を「成城の就業力」として定義しました。具体的には6つの要素から成り立つと定めています。
 近年、日本の教育においては、社会人基礎力や学士力など力を規定するものが非常に多く、大学界でもそういったものを各大学でも取り入れておりますが、本学では既存の指標は使わず、あくまでも成城大学オリジナルの力を定義・構築し、プログラムを展開しています。その中には、単なるテクニックやノウハウだけではなく、学生自らが考え行動していくことができるようになることが最重要であると考え、マインドとテクニックの両輪から学生を育成しています。


――マインドとテクニックを身につけてもらうということですが、具体的にはどういった形で提供されているのでしょうか?

 「就業力育成・認定プログラム」は、正課(授業)と正課外(授業外)の2つのプログラムから成り立っています。学生は、1年生から4年生まで成長段階に合わせて、さまざまなプログラムを受講することで自身が成長していくことをイメージし、本来の各学部学科の専門科目と並列して受講することにより、相乗効果をもたらすことを大事にしています。


――自ら考え行動する力や実践能力が、なぜ必要だと思いますか?

 もともと、このプログラムを作る際に、成城大学の卒業生に対してどんなイメージを持っているか、企業の皆さまへインタビューをさせていただきました。そこで象徴的かつ印象的だったのが、「真面目で努力家である学生が多い。特に、人間関係構築力は非常に優れている」という声がある一方で、「先頭に立ってチームを引っ張っていく力や、何もないところから新しいものを創り出す力やチャレンジする力はやや弱い」という声をいただきました。
 本プログラムでいう「他者と協調しながら」という点は、今までの成城大学の教育の強みですが、それだけではなく「自らを高め、自分自身が能動的に学んでいく」という点を兼ね備えた人材が必要ではないかと考え、そこを更に伸ばしていこうというのが大きな狙いです。
 成城学園は、個性を尊重することを重視しているため、他者と異なっても良いということを認識していることから、自分が1番になろうという力は弱いという印象です。
 今回のプログラムは、即効性で何かを身に付けさせようというものではなく、遅効性でゆっくりじっくり育てていくことを重視しています。我々は、すぐ答えは提供せず学生自身が考えたり悩んだり、その過程の中で調べたり、研究したりする中で、自らが発見して気付いていくということを大事にしています。
 捉え方によっては、学生本人も「何で答えを教えてくれないのだろう?」とモヤモヤしていることもありますが、この過程を経ることで、自ら積極的に能動的に取り組み問題をどう解決するか、また、他のメンバーと協力しながらも、中心になって引っ張っていくという力が育まれると考えています。
 目の前ですぐ答えが出ないものは、教育界では教えづらいと考える一方、そういった考え方を学校で育まないでどこでやるのかとも考えています。卒業後に学生が、自分で自分の人生を切り拓いていくことができるように、自ら問題意識を持ったり、考えたり、行動したり、誰かに協力を仰いだり、自ら選択する力を、学生時代に培ってもらいたいと考えています。それには、必ずしも成功体験だけでなく、失敗体験もあってはじめて人間は成長していきますので、様々な形で体験・経験することを大事にしています。


――失敗体験をすることが大事ということですが、プログラムの中で意図的に失敗体験をさせる仕組みはありますか?

 あえて失敗をさせるということは、さすがにしませんが、例えば、学年を越えたチームでのプロジェクトで課題に取り組む中で、タイプ・専門性、学年等が異なることからハレーションが生じて、それぞれの主義・主張が出てくれば、そこでぶつかることもあります。そのときに、我々は「あなたはこうしなさい。君はこうしなさい。」というようにすぐに解決するということは、なるべく最後の手段として取っておきます。
 自分たちで解決していけるような経験がないと、結果的に誰かが助けてくれるという思考になってしまいますので、なるべく自分たちで考えさせ、それでも難しいという場合はサポートしますが、まずは自分たちで解決させるということを重要視しています。また、情報やアドバイスを与え過ぎないということも」意識しています。


――プログラムは、具体的にどういった内容なのでしょうか?

 プログラムの特徴は、前期は理論や情報・知識をインプットする講義系の科目を中心とし、後期は、前期で培ったものをもとに、実習・演習系の科目を多く用意しています。それ以外の取り組みとしては、希望者には、プログラム自体を広報する活動があるので、学年・授業を越えて、オープンキャンパスやホームページの編集作業に関わったりする者もおります。


――ホームページ上で拝見しましたが、オープンキャンパスで、学生が司会をされたりもするのですよね?

 そうです。学生自らが受けたプログラムや授業を高校生や保護者の方へ紹介するので、自分自身も気付きや振り返りの場になりますし、それを見た高校生や保護者の方が、将来入学後に自分もああなるのかと想像することができ、彼らの姿を見て成城大学へ入学したいと思う人が増えてきています。


――就業力のプログラムは、必修化はされていないようですが、なぜでしょうか?

 このことについては、いろいろなところでインタビューを受けます。みなさん、同じように疑問を持たれるのですが、我々はあえて必修化していませんし、これからもその予定はありません。その理由としては、大きく2つあります。
 1つは、学生が自らのキャリアを考える上で、学生の成長段階や意識によって、当然考え始めるタイミングが異なると思います。ある学生は1年生の段階で考えようとする者もいれば、そうでない者もいるかもしれません。また、こういうプログラムを必ずしも受けなくてはいけないとも思っていません。ただ、1年のときに必要ないと思って受けなかったけれども、やっぱり受けとけば良かったと思うかもしれませんので、2年生からも受けられるようにしています。そういう意味では、選択肢を持たせることで、学生自らが考えて受講するかどうかを決めさせるという狙いがあります。
 もう1つは、必ずしもこのプログラムが万能だとは思っていないということです。大学には授業、さまざまなカリキュラムがあるので、それを学生自身が取捨選択するシステムがあって然るべきだと思っています。「自分はこれを受けてみようと思った」「私はこっちがいいと思う」というようなやりとりを学生間ですることにより化学反応を起し、相乗効果をもたらすと考えています。


――実際には、どのくらいの学生が参加されているのでしょうか?

 1年生の4月の段階で、約240人が受講しています。希望者は年々増えています。本学は1学年が約1400人くらいなので、だいたい2割弱くらいというところです。スタートした当初は160人なので、徐々に拡大しています。


――就業力の中に、「多角的連携による重層的で多様な展開」というものがポイントとしてありますが、こちらは具体的にどういった取り組みをされているのでしょうか?

 授業は、講義だけのものではなく、実習・演習系のものもあります。また、外部の方に協力いただき直接講義していただく、または課題を出していただき、それについて取り組むということもあります。この他にも大学生が高校生にプログラムを提供するといったいわば大学生がキャリア教育を担当する場面もあります。


――キャリア教育を担当ということは、学生が高校生に教えるということでしょうか?

 そうですね。大学生が直接教えるというより、共に考えるという方が近いと思います。
 例えば、内部進学をしてくる学園高校3年生約150人に対して、直前の時期である2月に、大学での学びとはどのようなものか、高校と大学との違いは何か、大学で学ぶにあたってどのようなことが重要かを、様々な形で授業体験をしてもらいます。また、大学生による体験談を踏まえながら、大学生活においてどういう意識が大事なのかということを、大学生と職員でレクチャーしています。
 また、講義形式で一方的に教えるのではなく、グループディスカッションやワークを取り入れています。大学生が高校生とディスカッションをするという場面もありますし、人前で発表することもあり、最終的には、なぜ成城大学に進学したいのかという志望動機まで書かせることを組み込んでいます。より具体的なイメージを持たせるために高校生が志望する学部・学科の大学生をなるべく参加させることも工夫しています。


――プログラムを受ける前と受けた後で、学生の変化はありますか?

 絶えず社会と接点をもつので、自身のキャリアについて考えるということについて、興味関心を持つようになります。能動的に取り組まないと始まらないプログラムであるため、受講生は積極性が高まっていると思います。
 一方で、ネガティブな側面になるかもしれませんが、キャリアについて考える機会が多く、大量の情報が入ってくるので、様々なリスクやメリット・デメリットがわかってしまうが故に、行動が遅くなってしまうことや、躊躇してしまうということもあるかと思います。


――こういったプログラムがあることを知っているけれども、なかなか自分で受講しようという気持ちにならない学生に対しては何か働きかけはされていますか?

 このプログラムは定員を設けているため、全学生数からみると本プログラムを受講していない学生の方が多いです。ただ、本学の場合、学生は各学部・学科において、必ずどこかのゼミナールに所属しなくてはいけません。ゼミナールは少人数制で必修なので、ただ参加していればいいというものではなく、そこで課せられた課題や先生から指導された内容に積極的に取り組まないと単位は取れないので、結果的に、自ら考え行動することを身につけられる場が本プログラム以外にも用意されています。


――キャリアセンターとして、今後の課題・展望をお聞かせください。

 大きく言うと、3点あります。
 1点目は、プログラムに参加していない学生が、どのような行動をとっているかを把握する必要があり、そのような学生に対し、必要であれば、サポートをする場面も出てくると考えています。受講していない学生に対してのキャリア支援をどのようにどのくらいどのレベルで実施すべきかを考えることが大きなテーマではないかと思っています。
 2点目は、現在も取り組んでいますが、プログラムを受けた学生が、自分たちの学部・学科で学びを深めているかを明らかにすることが必要だと考えております。このプログラムを受けた学生がどう成長したのか、どう変化したのかについて、客観的に評価をしどの程度有効性があるのか、必要であれば適宜テコ入れ・改修をすることが必要だと思っています。
 3点目は、より複合的に自身の学びと社会で求められているものをリアルタイムにつなげていくことが必要になっていくと思っています。例えば、現在のプログラムは、国際競争力の育成の視点はあまり取り入れていませんが、グローバルな視点での育成を始め、各学部・学科での学びを深める連携、最終的に社会にどうつなげていくかということが大事になってくると思っております。


(この記事は、2014年7月に、成城大学キャリア支援課内でインタビューした内容をもとに構成されています。)

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_2工学院大学

「意欲・自らいろんな人と交流するコミュニケーション力」――工学院大学 学生支援部 就職支援課 課長:齋藤伸明氏


 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。
 今回は、工学院大学 学生支援部 就職支援課の課長:齋藤伸明氏にお話を伺いました。


――新卒の新入社員が就職して3年以内に辞めてしまう離職率が問題視されていますが、新入社員側にはどのような原因・問題が考えられるでしょうか?

 離職率の問題は、昔からありましたが、いちばん多い理由として、人間関係の問題が挙げられると思います。年の離れた人たちと一緒に仕事する中で、うまくコミュニケーションがとれず、何か悩みがあっても会社の中の誰にも相談できずに会社を辞めてしまうということがあるのかなと思います。
 あとは、イメージ先行の就職活動で、仕事のイメージと現実とのギャップというリアリティショックによって、自分の働くイメージを持つことができないというのも原因かと思います。


――イメージ先行の就職活動をしないようにするためには、どうしたらいいでしょうか?

 学生のときから、働いている人・社会人とたくさん話し、多くの仕事に接触することが大切だと思います。アルバイトでもいいですが、アルバイトだとほぼサービス業に限定されてしまいます。世の中にはそれ以外の仕事もあるので、いろんな人と接することが大切だと思います。
 その方法の1つとして、インターンシップがありますが、3年生の夏だけではなく、1・2年生のうちから参加して、社会人との力の差を知ったり、学生生活の中でどう課題を解決していくのか考えたり、働くってどういうことなのかということを、しっかり理解することが重要だと考えています。
 一方で、近年、キャリア教育を授業で実施している大学も増えましたが、私が考えるキャリア教育は、そもそも通常の授業の中でできるのではないかと考えています。例えば、基礎的な知識を与える授業がありますが、そういう知識をただ与えるのではなく、その知識がどのように社会につながっているのか、今やっている研究がどう社会に活かされるのかを見せながら教育していくことが大事だと思います。
 ただ実際のところ、残念ながら、今はそこが充分にできていません。きちんと示すことができていれば、学生は自分のやってきたことが社会にどう活かされるのかがイメージでき、仕事への興味や関心も1・2年のうちから持つことができるのではないかと思います。そこがうまくいけば、企業名を知っているから受けるとか、CMで見たことのある会社だから受けるという安易な行動は防ぐことができるかと思います。特に技術者だと、BtoCに限らずBtoBの企業で活躍できるチャンスの方が圧倒的に多いので、そういったところにも目がいくようになるのではないかと思っています。


――興味・関心を持たれている学生は、御校ではどのくらいいらっしゃいますか?

 理系の大学なので、科学とか、モノづくりなどに興味があり、好奇心旺盛な学生が多いですが、その反面、「自分はこうだ」という決めつけ型の学生が多いということもあります。例えば、自動車好きな学生は、自動車メーカー中心に受けに行くのですが、このように意識が強すぎると、逆に自分のその他の可能性を閉ざしてしまう危険があると感じています。自分の興味のある一部のところだけに縛られてしまう懸念があります。


――自分の興味のあることだけに縛られてしまうことのいちばんの問題はなんでしょうか?

 今は、企業においても、この分野を勉強してきた学生だけがほしいという需要はあまりないと思います。例えば、食品メーカーですと、農学部や化学系出身の技術系のスタッフが多くいると思いますが、そこに機械系や電気系の人の知識があるからこそ、工場ができたり、新しい商品の製造ラインが組めたりということが可能になります。「自分に食品業界は関係ない」と思っている機械系・電気系の学生は非常に多いですが、もっと活躍できる場はあるのに、自ら選択肢を狭めてしまっていることはもったいないと思います。
 つまり、自己分析で深掘りし過ぎてしまって、「やっぱり自分はこうだ!」と思いすぎてしまって、その範囲から外を見ることができなくなってしまっているのことが、問題かなと思っています。


――自己分析の逆効果と仰いましたが、そういった思い込みを防ぐ方法はありますでしょうか?

 違う選択肢も併せて提示してあげることが大事だと思っています。学生は、だいたいトヨタ自動車などBtoCの知っている企業ばかり受けようとしますが、一般的に認知度が高くないBtoBの企業に対してはなかなか目が向けられない傾向があります。そういう企業にも目を向けてもらえるように、BtoB企業の学内説明会を積極的に開催してもらったり、世の中の社会の仕組みを理解してもらった上で、色々な業界があることを学生に提示したりしています。
 自分がこの業界に行きたいから、この企業のインターンシップを受けるというよりも、まずは働くということに触れてみる。社会に触れてみる。という目的、見せ方にして、学生が社会と接する中で、自分自身の可能性を広げることのできる機会を増やしていきたいと思っています。


――「自分がこの業界に行きたい!」という視点ではなく、別の視点にして考えることができている学生は、現状どのくらいいますか?

 少ないと思います。就活の面接でよく「学生時代に力を入れていることは何ですか?」と聞かれることが多いですが、学業以外何も思いつかないという学生が多いのが現状です。失敗を恐れてか、課外活動で色々なことにチャレンジする学生がまだまだ少ないと思います。
 学業は学業でいいとは思いますが、社会と接して自己成長できた経験の1つとして、インターンシップが挙げられますが、社会人と自分の差を理解し、そこから自分自身がどう努力したのかということも自己PRの1つになることを学生に説明しています。
 自己成長の1つのツールとして、インターンシップを使ってほしいと考えており、そういった点でも、自分が働きたい業界と全く同じでなくても積極的に参加することを勧めております。食品メーカーでも、機械系・電気系出身の社員が活躍していると思いますし、そういう社員さんと接する事で、「あっ、こういう働き方もできるんだ」と知るきっかけになればと思っています。


――そういった機会を、どの時期に実施していますか?

 大学3年生の夏休みにインターンシップに参加するという単位認定の授業が、10年以上前からあります。現在受け入れ企業が200社以上、参加学生も300名を超えます。また、多様な価値観を持った人たちに触れ、視野を広げることの重要性を学ぶという意味では、鳥人間コンテストなどの「学生プロジェクト」というものがあります。学科の枠を超えてメンバーが集まり、学生自身が年間計画を立てたり、スポンサーを獲得したりなど、協働作業をする場を設けることをしています。
 また、毎年夏に、八王子キャンパスで「科学教室」を実施しています。地元の小学生・中学生を相手に、学生が先生となって教える体験をしたり、親御さんも含めて一緒に実験をしたりなど、いろんな年代の人たちとコミュニケーションがとれる場を提供しています。
 これらは、学年問わず実施しているものですが、何年も継続して参加し、世界大会に出ましたという学生もいますし、学生の意欲次第でいろんなものに参加できると思います。逆に、待っているだけでは相手から声はかかりませんので、学生の自由意志という点で非常に難しいところではあります。


――学生プロジェクトや科学教室に参加されている学生は、意欲のある学生が多いと思いますが、意欲のない学生は、どうしたら意欲を持つことができるでしょうか?

 学生プロジェクトや科学教室は1つのツールなので、それに限らず、自分の趣味嗜好に合ったアルバイトやボランティアなど、趣味遊びでもいいので、たくさんの人と接することが重要だと思います。
 学生には、常日頃から言っているのですが、老若男女問わず、いろんな世代の人と関わることが学びという点で大切なことであり、将来、技術者として活躍するためには学生時代に、いろんな価値観、国境問わず接することがポイントかと思います。


――実際に、いろんな人と関わることができている学生は多いですか?

 残念ながら少ないと思います。学校自体は、非常にいい立地にありながら、なかなか外に出ていきたがらないという学生が多いです。例えば、国籍を問わず、他大学の学生と関わることで、同じ年代の人が頑張っている様子を見て刺激をもらったり、違う価値観を受け入れたりできると思うのですが、他大学の学生とも関わるように促しても、動けない学生がほとんどです。自分から殻を破っていける学生が少ないのが現状です。


――学生が自分で何か動いたり、殻を破ったりできるようになるために、何か取り組みはしていますか?

 本学の学生が外に出ていきたがらない背景としては、自己肯定感が高くないからだと思っています。なぜ自己肯定感が高くないかを考えると、大学入試の際の偏差値が影響しているからではないかと思っています。偏差値を引きずって就活に入り、大手に行きたいと言いながらもチャレンジすることをなかなかしない学生がいます。
 そこを解消するためには、経験や成功体験を積み上げることができる場を提供してあげることぐらいしかできないと思っています。
 全学的には、ハイブリッド留学という取組を2013年度から始めたり、建築学部での例をあげますと、3.11の被災地の人たちに対して、ボランティア活動の一環として、現地の避難所の体育館などで設計図を引いて、ダンボール家具や間仕切りを作ったり、被災地の新たなまちづくりのアイディアを提案するというフィールドワークを行ったりしました。学校で学んできたことを活かしたボランティアをする中で、相手目線で創るという経験、得た知識を社会で発揮することで誰かの役に立つ経験をしました。例えば、そういったひとつひとつの取り組みが、学生の自己肯定感を高め、自信を持つことに繋がると考えています。


――建築学部の例は、おそらく3・4年生での例かと思いますが、1・2年に対しては何か経験や成功体験できることを提供していますでしょうか?

 1・2年生に対しては、学生プロジェクトや部活動の他になかなか機会を提供できていないのが現状です。研究活動する上では、基礎学力が重要となるので、1・2年生は、基礎学力を身につけることを徹底しています。また、技術者として働く上で重要な「協働作業」の場をたくさん提供しています。そこを第1のミッションとしています。


――1・2年に対して、経験や成功体験の提供は難しいということですが、意欲をつけさせる取り組みはしていますか?

 日頃の授業の中で、どういう目的で、社会とどうつながっているのか、どういう利益をもたらすのかなど、今やっている勉強がこういった企業のこういう商品に活かされているということを提示できれば、授業に対する取り組み方や、就活に対する熱意にもつながってくると思います。そういった授業を展開してもらえるように、委員会を通して、教員に働きかけをしています。


――就職支援課として、今後の課題・展望をお聞かせください。

 課題としては2つあります。
 1つ目は、内定を獲得できる学生と獲得できない学生の二極分化が広がるなか、学生のメンタル面での弱さが目につくことです。ちょっとしたつまずきで、もう就職活動をしないとか、授業自体も出てこないなど、こちらからアプローチしてもなかなか連絡がつかないということがあります。
 2つ目は、BtoBの企業に目を向けさせることです。自分や親が知っている企業は、ほんの一握りの企業であって、世の中に存在する企業のすべてではないということを伝え、可能性を広げさせたいと思います。例えば、工場見学を実施して、リアルな働く姿をみてもらったり、キャリアパスのモデルとなる卒業生の話はいちばん効果的なので、OB・OGの座談会など、卒業生の話を聞く機会を設けたりしようかと思っています。
 本学の就職支援のゴールは、「内定を獲得させること」ではなく、「世の中で活躍できる人材を送り出すこと」です。そのための支援を積極的に展開していこうと思います。


(この記事は、2014年5月某日に、工学院大学 就職支援課内でインタビューした内容をもとに構成されています。)

インタビュー「仕事で活躍するために必要な力」_1学習院大学

「自ら考え行動する力」――学習院大学キャリアセンター 部長:瀬谷晴仁氏


 「仕事で活躍するために必要な力」を切り口として、各大学のキャリアセンターの方々のご意見を紹介いたします。
 今回は、学習院大学キャリアセンターの部長:瀬谷晴仁氏にお話を伺いました。


――早速ですが、ズバリ仕事で活躍するために、最も重要な力は、なんだと考えていらっしゃいますか?

 いろいろ大事なものはありますが、いちばんと言われると、「自ら考え行動する力」ですね。キャリアセンターのセミナーもたくさんありますが、基本的にはこの力を身につけるというところが軸となっています。


――なぜ、「自ら考え行動する力」が仕事で活躍するために必要なのでしょうか?

 言われたことはやるけども、それ以上のことはしない社員のことを、「指示待ち社員」と言いますが、そういった人は、次にどうすべきかを自分なりに考えて行動することができないため、上司や先輩に指示されないと動けないわけです。当然のことですが、いつも上司や先輩が指示してくれるわけではなく、マニュアルにないような想定外の事態は日常的に起こり得るわけで、「指示待ち社員」では通用しないことは言うまでもありません。そのような社会人にならないためには、早くから自分で考え、行動する習慣を身につけておく必要があります。
 少し話がそれてしまうかもしれませんが、最近の学生をみていると、自分の考えを自分なりにまとめ、それを相手に伝えるということが苦手なようです。キャリアセンター主催のセミナーでそのようなことを求めると、最初は戸惑ってしまう学生が多いのです。なぜなのかを考えてみると、小さい頃から育ってきた環境の中で、他人と違う意見を言うことに抵抗を感じたり、失敗を極端に恐れたりする傾向があるように思います。
 こうした状況だからこそ、自分なりの考え方、自分なりの意見を、相手にきちんと伝えられる人材を育てることが必要だと考えています。


――「自ら考え行動する力」を身につけるため、キャリアセンターとして、具体的にどういった取り組みをしているのでしょうか?

 キャリアセンターでは、一昨年から、一方的な講義形式ではなく、グループワークを取り入れた討論型のセミナーを実施しています。毎回テーマは異なりますが、例えば「皆さんが考える営業職のイメージとは?」のようなテーマについて、まずは自分の考えをまとめます。その後、たまたま隣に座った者同士がチームとなり、お互いの考えを発表し意見交換します。最後にチームとしての意見をまとめ、発表させることもあります。
 他の人と互いに発表し合うことで、「そういう価値観もあるのだな」ということを体感してもらい、視野を広げられるようにしています。その結果、自分で考える力に加えプレゼンテーション力が徐々に身についていきます。
 考える力やプレゼンテーション力は、場数を踏んでこそ身につくものですので、毎回反復してグループワークを行っています。これは、就活を突破するためというよりも、その先、社会人になってから活かせる力、一生モノの力を身につけてもらうことを前提にしています。


――そういった討論型のセミナーでは、自分からなかなか考えを発言することができない学生もいるかと思いますが、そういった学生に対して働きかけはしていますか?

 前にも述べたとおり、毎回のセミナーにおいて議論し発表することを、繰り返し体験することにより、始めた頃に比べると、多くの学生が積極的に自分の意見を発表できるようになります。また、自分よりも企業や職種のことをよく知っている人、人前で上手に話すことができる人など、いろんな学生と接することで刺激を受けることができるという効果もあると思います。
 何百人もの学生が参加するので、すべての学生に同じ効果があらわれないこともあるかと思いますが、そのような場合は「個人面談」で、個々のペースに合わせてサポートしていくことになります。


――こういったセミナーなどは、1・2年生も対象としているのでしょうか?

 これらのセミナーは、主に3年生および大学院博士前期課程1年生を対象としていますが、1・2年生が受講可能なセミナーもあります。
 1年生向けには、まず新入生ガイダンスを開催し、部活・サークル、ゼミ、アルバイトなど何か打ち込めるものを見つけましょう、そして4年間充実した学生生活を送るよう心がけましょうといった内容のお話しをします。
 その後も、業界研究ワークショップ、職種研究ワークショップ、公務員ガイダンス、マナー講座、マスコミ・広告セミナーなど、1・2年生も参加できるものを用意していますが、参加者は決して多いとはいえない状況です。キャリアセンターとしては、より多くの1・2年生に参加してもらうことが課題となっています。


――学生が集まらないという課題があるということですが、逆に学生に人気のあるセミナーはありますか?

 学習院大学の看板行事である面接対策セミナーは、非常に人気があります。昨年度は3年生の在籍者約2,000人のうち1,500人以上の参加希望者がありました。このセミナーは、あまり宣伝をしなくても先輩からの口コミで参加者が多く集まります。
 面接対策セミナーは、総勢290名のOB・OG講師が、面接のテクニックだけでなく「働くことの意義」について熱く語り、たった2日間ではありますが、受講した学生の大きく成長した姿を見ることができます。
 ただし、面接対策セミナーの参加希望者が増えたこと自体は喜ばしいことなのですが、「このセミナーだけ受ければ何とかしてくれるだろう。」という受身の姿勢で参加する学生が、ごく一部ではありますが存在します。どのセミナーでも同じですが、何を得るためにセミナーに参加するのかという目的意識をしっかり持ち、自分なりに準備して参加することにより、より多くのものを得ることができます。そういった意味でも「自分で考えて行動する力」が求められるわけです。


――キャリアセンターとして、今後の課題・展望をお聞かせください。

 景気の回復に加え、面接対策セミナーや討論型のセミナーの効果もあってか、就職率はここ2年間上昇しました。しかし、キャリアセンターとしては、就職率だけでなく、自分がやりたい仕事、入りたい企業にどれだけ就くことができたかがより重要です。そのような就職の「質」を少しでも上げていければと考えています。
 その実現のためにも、学生に「自ら考え行動する力」をつけさせる努力を今後もつづけていきたいと思います。


(この記事は、2014年5月某日に、学習院大学キャリアセンター内でインタビューした内容をもとに構成されています。)